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SaaS開発の費用相場と内訳|現場で見た失敗と対策

この記事に出てくる専門用語

  • MVP(Minimum Viable Product):顧客に最低限の価値を届けられる、機能を絞った試作版のプロダクトのこと。
  • PSF(Problem Solution Fit):「顧客が抱える課題」と「自社が用意した解決策」が噛み合っている状態のこと。
  • PMF(Product-Market Fit):作ったプロダクトが市場に受け入れられ、継続的に使われている状態のこと。
  • バーニングニーズ:「頭に火がついた」ような、放っておけないほど切迫した顧客課題のこと。あれば便利ではなく、なければ困るレベルの課題を指す。
  • ラボ型(準委任)契約:完成物への対価ではなく、一定期間チームを確保して稼働してもらう契約形態。仕様変更への対応がしやすい。
  • RFP(Request for Proposal、提案依頼書):発注側が開発会社に対して「こういうものを作ってほしい」とまとめる依頼文書のこと。

✔ この記事でわかること

  • SaaS開発の費用相場(MVP:300万〜800万円、中規模:1,000万〜3,000万円、大規模:3,000万円以上)
  • 開発費用の内訳と、各工程で何にお金がかかるのか
  • 予算内で成果を出すための開発戦略(MVPからの段階的開発、優先順位づけ、オフショア活用など)
  • 見積もりに含まれない「隠れたコスト」と対策方法
  • 開発会社選びで失敗しないためのチェックポイント

「SaaSを作りたいけど、いくらかかるのか全く想像がつかない」「見積もりを取ったら予算の3倍だった」——新規事業でSaaS開発を検討する際、最初の壁になるのがSaaS開発の費用の問題です。

Wurでは2019年の創業以来、50社以上の新規事業を一気通貫で支援してきました。その中で「初期投資をかけすぎて頓挫する」「安さだけで選んで作り直しになる」といった失敗パターンを何度も目にしています。

この記事では、SaaS開発の費用相場を機能別・規模別に整理した上で、Wurの現場で実際に使っている「予算内で価値を最大化する開発戦略」を具体的にお伝えします。

SaaS開発の費用相場:機能別・規模別の目安

SaaS開発の費用は「どんな機能を、どこまで作るか」によって大きく変わります。まずは規模別の相場感を一覧で押さえておきましょう。

規模費用の目安主な機能例
シンプルなSaaS(MVP)300万〜800万円ログイン、基本ダッシュボード、コア機能1〜2個、決済連携
中規模SaaS1,000万〜3,000万円複数権限管理、詳細レポート、複数API連携、モバイル対応
大規模・エンタープライズ向け3,000万円以上マルチテナント対応、SSO、専用アプリ、多言語対応

シンプルなSaaS(MVP):300万〜800万円

最小限の機能で顧客に価値を届けるMVP(Minimum Viable Product、=機能を絞った試作版)レベルのSaaSなら、一般的な相場は300万〜800万円です。

含まれる機能例としては、ユーザー登録・ログイン機能、基本的なダッシュボード、1〜2つのコア機能(顧客管理やデータ分析の基礎など)、シンプルな管理画面、Stripe等を使った決済機能などが挙げられます。

Wurでは、期間2ヶ月〜・費用337.5万円〜でMVP開発を支援しています。これは相場の中でも抑えた水準にあたります。「まずは市場にバーニングニーズ(頭に火がついたような切迫した課題)があるか検証したい」という段階では、フル機能を作り込む前に、このレベルから始めるのが賢明です。

中規模SaaS:1,000万〜3,000万円

複数の機能を持ち、ある程度の規模のユーザーに対応できるSaaSの開発費用は、1,000万〜3,000万円が目安です。複数の権限管理(管理者・一般ユーザー等)、詳細なデータ分析・レポート機能、複数の外部サービスとのAPI連携、メール通知、モバイル対応、2段階認証などのセキュリティ強化がこの規模に含まれてきます。

Wurに相談に来るクライアントの中には、このレベルを最初から目指してしまい、結果的に予算オーバーになるケースが少なくありません。「将来必要になるかもしれない機能」まで初期開発に盛り込んでしまうのは、リスクの高い選択です。

大規模SaaS・エンタープライズ向け:3,000万円以上

エンタープライズ向けや高度な機能を持つ大規模SaaSの場合、開発費用は3,000万円を超えることも珍しくありません。複雑なワークフロー管理、SSOやIPアドレス制限などの高度なセキュリティ、マルチテナント対応、大量データの高速処理、専用モバイルアプリ、多言語対応などが該当します。

ただし、Wurの現場で見てきた成功パターンは「最初から大規模を目指さない」ことです。まずはMVPで顧客のニーズを検証し、PMF(Product-Market Fit、=プロダクトが市場に受け入れられている状態)を確認してからスケールさせる方が、結果的に成功確率は高まります。

SaaS開発費用の内訳:何にお金がかかるのか

SaaS開発の見積もりを見たとき「なぜこんなに高いのか」と感じる方も多いでしょう。まずは費用の内訳を、全体に対するおおよその割合で整理してみます。

工程費用の目安(全体比)主な作業内容
要件定義・設計15〜25%ビジネスモデル整理、ヒアリング、要件定義書作成
UI/UXデザイン10〜20%画面デザイン、プロトタイプ作成
フロントエンド・バックエンド開発40〜50%実装、API開発、データベース設計
テスト・品質保証10〜15%単体・結合・セキュリティ・負荷テスト
インフラ・保守運用月5万〜30万円サーバー費用、監視保守、セキュリティ対応

※上記は一般的な目安であり、案件の内容によって前後します。

要件定義・設計フェーズ

「どんな機能が必要か」「どんな画面構成にするか」を決める上流工程です。ビジネスモデルの整理、ユーザーインタビュー、機能要件の洗い出し、ワイヤーフレーム作成、システム設計書作成などが含まれます。

Wurでは、この段階でバーニングニーズを特定することを最も重視しています。「あれば便利」ではなく「これがないと困る」という機能を見極めないと、後工程でのムダが発生するからです。

UI/UXデザイン

ユーザーが実際に触れる画面のデザインです。SaaSの場合、使いやすさが継続率に直結するため、ここに投資する価値は高いといえます。デザインコンセプト策定、全画面のデザイン作成、プロトタイプ作成、デザインシステム構築などが該当します。

Wurに相談に来るクライアントの中には「デザインは後回しでいい」と考える方もいますが、特にBtoB SaaSでは、使いにくいツールは現場で定着しません。初期段階からユーザー視点のUI/UXを意識することが、長期的な成功につながります。

フロントエンド・バックエンド開発

実際にコードを書いてシステムを構築する工程で、開発費用の中心を占めます。フロントエンド開発(React、Vue等)、バックエンド開発(Rails、Node等)、データベース設計・構築、API開発、セキュリティ実装などが含まれます。

Wurでは、日本人PMによるベトナムオフショア開発を活用し、この部分のコストを国内開発の約1/2に抑えています。開発チームはベトナム・ハノイ工科大学出身者が中心ですが、システム設計・コードレビューは必ず日本人エンジニアが担当するため、「安いけれど品質が心配」という不安には、ISO9001・ISO/IEC27001の取得やISTQB Platinum Partnerとしての品質管理体制で応えています。コストを抑えながら品質を落とさない、という両立がこの体制の狙いです。

テスト・品質保証

動作確認やバグ修正を行う工程です。「リリースしたらすぐ不具合」という事態を防ぐため、ここを削るのは避けたい部分です。単体テスト、結合テスト、セキュリティテスト、負荷テスト、バグ修正などが該当します。

インフラ・保守運用

SaaSは「作って終わり」ではありません。サーバー費用(AWS、GCP等で月1万〜10万円程度)、監視・保守運用(月3万〜15万円程度)、セキュリティアップデート対応(月1万〜5万円程度)といったランニングコストも見込んでおく必要があります。ユーザー数が増えるほどサーバー費用は上がるため、成長を見越した予算計画が欠かせません。

予算内で成果を出す開発戦略

ここからは、Wurの現場で実際に使っている「予算を最大限活かす開発戦略」を紹介します。

MVPから始めてPMFを確認する

「最初から完璧なSaaSを作る」という考え方は、新規事業では最もリスクの高い選択です。Wurでは、PSF(Problem Solution Fit、=課題と解決策が噛み合っている状態)からPMFを目指す流れで支援しています。まずはMVPで「本当に顧客が求めている機能」を検証し、反応が良ければ追加開発でスケールさせる。この進め方であれば、初期投資を抑えながら成功確率を高められます。

実際にWurが支援したPM Agent(採用自動化システム)では、月30時間かかっていた採用関連業務をゼロにするところまで進みました。小さく作って検証を重ねる進め方が、こうした成果につながっています。

優先順位をつけて「今作るべき機能」だけ開発する

「将来的に必要になりそう」「あったら便利かも」——そんな機能を初期開発に盛り込むと、予算は簡単に2倍・3倍に膨らみます。Wurに相談に来るクライアントの中で見積もりが高額になっているケースの多くは、機能の優先順位がついていないことが原因です。「今すぐ顧客に価値を届けるために絶対必要な機能」だけに絞り込めば、開発費用は大きく抑えられます。

判断の目安は次の3つです。「この機能がないと顧客は困るか」がYESなら優先度は高く、「代替手段はあるか」がYESなら後回しにでき、「この機能で収益が上がるか」がNOなら削除候補になります。

ノーコード・ローコードツールとの組み合わせを検討する

すべてをフルスクラッチで開発する必要はありません。管理画面はRetoolやBubble、決済機能はStripeやPAY.JP、メール配信はSendGridやMailchimp、認証機能はAuth0やFirebase Authenticationといった既存ツールを組み合わせれば、開発期間・費用を抑えられます。

ただし、ノーコードツールには柔軟性の限界もあります。「ビジネスのコア機能」は独自開発し、「周辺機能」は既存ツールで代替する——このバランスが重要です。

オフショア開発で品質を保ちながらコストを削減する

「オフショア開発は安いけど品質が心配」と感じている方も多いでしょう。確かに、言語の壁や仕様伝達のミスでトラブルになるケースはあります。

Wurでは、ベトナム・ハノイ工科大学出身者を中心とした開発チームを持ち、日本人PMが必ずプロジェクト管理を担当します。システム設計・コードレビューも日本人エンジニアが行うため、「安かろう悪かろう」にはなりません。コストは国内開発の約1/2に抑えつつ、上場企業グループとしての品質基準(ISO9001・ISO/IEC27001、ISTQB Platinum Partner)を満たす体制をとっています。

ラボ型契約で仕様変更にも柔軟に対応する

Wurではラボ型(準委任)契約を採用しています。固定の月額費用で開発チームを確保しながら、途中で仕様が変わっても柔軟に対応できるのが特徴です。開発の流れは、STEP1のビジネス設計フェーズ(0.5〜2ヶ月、ヒアリングやバーニングニーズの特定)、STEP2のUIデザイン・要件定義(0.5〜1.5ヶ月)、STEP3のシステム設計・実装(1.5ヶ月〜)という3段階で進めます。請負契約では仕様変更のたびに追加費用の交渉が発生しやすいのに対し、ラボ型は「決まっていない部分がある」段階からでも動き出しやすい契約形態です。

補助金を活用して実質負担を削減する

SaaS開発には、国の補助金を活用できる可能性があります。代表的なものが、IT化・AI活用による業務効率化を支援する「デジタル化・AI導入補助金」と、新製品・新サービス開発を支援する「ものづくり補助金」です。

実際にWurが支援した企業の一例では、外注見積もりが2,000万円以上だったシステムを、これらの補助金を活用することで実質負担300万円以下で実現できたケースがあります。「補助金は手続きが面倒」と感じる方も多いですが、対象になるかどうかを早めに確認しておく価値はあります。

最新サービスの「Wur ゼロイチAI」では、AI PMが曖昧なアイデアを15分で事業計画書に変換し、Claude Codeを活用することで、従来の1/3の期間・コストでMVP納品を目指せます。開発費・期間・リスクを最大1/3に削減しつつ、補助金の自動診断・申請書作成まで支援するのが特徴です。なお、この「1/3」という数値は、通常のMVP開発(期間2ヶ月〜・337.5万円〜)とは別軸の、Wur ゼロイチAI固有の実績です。月3社限定で無料AI事業診断ワークショップも実施しています。

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SaaS開発の「隠れたコスト」に注意

見積もりに含まれていない「隠れたコスト」が、後から発生するケースもあります。

仕様変更・追加開発の費用

開発途中で「やっぱりこの機能も欲しい」となった場合、追加費用が発生します。対策としては、要件定義フェーズで徹底的に詰めることに加え、前述のラボ型(準委任)契約のように、仕様変更に柔軟に対応できる契約形態を選ぶことが挙げられます。

セキュリティ対策・法令対応の費用

個人情報を扱うSaaSの場合、プライバシーマーク取得などの法令対応が必要になることがあります。これらは初期見積もりに含まれていないケースも多いため、事前確認が必須です。

リリース後のマーケティング・営業費用

「SaaSを作れば売れる」わけではありません。リリース後のマーケティング・営業活動にも予算を確保しておく必要があります。Wurでは、ビジネス設計から開発・グロースハックまで一気通貫で支援しています。「せっかく作ったのに使われない」という事態を防ぐため、上流段階から「どうやって顧客を獲得するか」まで一緒に設計します。

開発会社選びで失敗しないチェックポイント

SaaS開発の費用は、発注先によって大きく変わります。「安いから」だけで選ぶと、後悔することになりかねません。開発会社を選ぶ際のポイントについては新規事業の開発会社の選び方|失敗しない5つのポイントでも詳しく解説していますが、ここではSaaS開発に特化した3つの視点をご紹介します。

  • 新規事業の上流支援ができるか:一般的な開発会社は「RFP(提案依頼書、=発注側がまとめる依頼文書)があれば開発する」スタイルですが、新規事業ではRFPを作る段階から支援が必要なケースが多くあります。Wurでは、「アイデアはあるが何から始めればいいかわからない」というお客様に対して、ビジネス設計フェーズから一気通貫でサポートします。
  • 開発後のグロース支援まで対応できるか:「開発して納品したら終わり」という会社も多いですが、SaaSはリリースしてからが本番です。Wurでは、ユーザー行動分析やA/Bテスト、機能改善の優先順位づけなど、PMFを達成するまで伴走します。
  • SaaS開発の実績が豊富にあるか:介護施設向け加算取得支援SaaS、マイナンバー管理SaaS、賃貸管理システム、経営予実管理クラウドSaaS、動物病院予約受付DXなど、Wurがこれまで手がけてきたSaaS事例から培った知見が、開発会社選びの判断材料になります。

CTOがいないスタートアップが外部パートナーをどう活用すべきかについては、スタートアップにCTOがいない時の開発戦略|外部パートナー活用のリアルでも解説しています。またMVP開発と並行してPoC(概念実証)を進める手法は、新規事業のPoC(概念実証)を成功させる進め方|現場で見た失敗パターンと対策にまとめています。

まとめ

SaaS開発の費用は、規模や機能によって300万円〜3,000万円以上と幅がありますが、大切なのは「予算内で最大の価値を生む戦略」です。MVPから始めてPMFを確認すること、優先順位をつけて今作るべき機能に絞ること、ノーコードツールやオフショア開発を組み合わせること、ラボ型契約で柔軟性を確保すること、そして補助金の活用可能性を早めに確認すること——この5つが、予算を活かすための現実的な選択肢になります。

Wurでは、2019年の創業以来50社以上の新規事業を支援する中で、「初期投資をかけすぎて頓挫する」「安さだけで選んで作り直しになる」といった失敗パターンを数多く見てきました。そうした経験を踏まえ、失敗確率を減らす開発パートナーとして伴走しています。

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閏間 莉央

AUTHOR

Wur株式会社 代表取締役 閏間 莉央

シリコンバレー留学をきっかけにIT業界へ。エンジニアとしてキャリアを積んだ後、
大手企業の新規事業開発・スタートアップCTOを経てWur株式会社を創業。
「人々の日常に、心躍る体験を。」をミッションに、新規ビジネスの立ち上げを一気通貫で
支援している。

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