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新規事業のCTO不在を乗り越える開発パートナー活用法

この記事に出てくる専門用語

  • CTO(Chief Technology Officer、最高技術責任者):会社の技術方針や開発チームの意思決定に責任を持つ役職のこと。
  • MVP(Minimum Viable Product):顧客に価値を届けられる、必要最小限の機能に絞った試作版のプロダクトのこと。
  • バーニングニーズ:ユーザーが「今すぐ何とかしたい」と切実に感じている、頭に火がついたような課題のこと。
  • PSF(Problem Solution Fit):見つけた課題と、それに対する解決策が本当に噛み合っているかを検証する段階のこと。
  • PMF(Product Market Fit):完成したプロダクトが実際の市場に受け入れられ、使われ続ける状態になっているかを検証する段階のこと。
  • RFP(Request For Proposal、提案依頼書):発注者が開発会社に対し、作りたいものの要件をまとめて提示する文書のこと。

「新規事業を立ち上げたいが、社内にCTOも技術責任者もいない」

こうした悩みを抱える企業は少なくありません。Wurに相談に来るクライアントの中でも、特に大手企業の新規事業部門やノンテック系スタートアップから、新規事業でCTO不在という同じ課題をよく聞きます。

CTOが不在のまま新規事業のシステム開発を進めると、仕様の迷走、予算超過、納期遅延といったリスクが高まります。だからといって、いきなり正社員のCTOを採用するのは現実的ではないケースも多いでしょう。

本記事では、CTO不在の状況でも新規事業のシステム開発を成功させるための考え方を、Wurの支援現場で実際に機能してきた方法を中心に解説します。

新規事業でCTO不在のまま進めるリスク

まず、CTO不在のまま開発を進めることで生じる主なリスクを整理しましょう。

技術的な判断ができない

開発会社から提案された技術スタック(使用するプログラミング言語やツールの組み合わせ)や見積もりが妥当かどうか、社内で判断できる人がいません。結果として、過剰な機能を盛り込んだ高額な見積もりをそのまま受け入れてしまったり、逆に必要な機能が抜け落ちていることに気づかなかったりするケースが起こりやすくなります。

要件定義が曖昧なまま進行する

技術責任者がいないと、「何を作るべきか」の要件定義が曖昧なまま開発がスタートしがちです。開発途中で「やっぱりこの機能も必要だった」と気づいても、追加費用や納期延長が発生し、プロジェクト全体が破綻してしまいます。

バーニングニーズを特定せずに開発を始めると、誰も使わないプロダクトが完成してしまう危険性があります。だからこそ、開発に入る前にこの課題の切実さを確かめる工程が欠かせません。

開発会社とのコミュニケーションが困難

技術的な専門用語が飛び交う開発現場で、CTOや技術責任者がいないと開発会社との意思疎通が極めて難しくなります。「このAPIはRESTful設計で」「フロントはReactで実装します」と言われても、それが適切かどうか判断できない、という声はよく聞かれます。

開発後の保守・運用が属人化する

仮にシステムが完成しても、技術責任者不在のままでは保守・運用が開発会社に完全依存する状態になります。機能追加や改修のたびに高額な費用が発生し、事業のスケールを阻害する要因となりかねません。

なお、CTO不在という課題は新規事業だけでなく、既存事業のDX推進でも似た形で起こります。Wurでは製造業において、ベテラン社員の頭の中にしかなかった見積作成のノウハウをAIが初稿作成する支援も行っています。新規事業に限らず、社内に技術の目利き役がいない状態は共通の課題だと感じています。

CTO不在でも新規事業を成功させる3つの戦略

では、CTO不在の状況でどう対処すればよいのか。Wurでは2019年の創業以来、50件以上の新規事業を一気通貫で支援してきましたが、その中で特に有効だった戦略を3つ紹介します。

戦略1:外部CTO・技術顧問を活用する

最も直接的な解決策は、外部の技術責任者を活用することです。正社員としてCTOを採用するには時間もコストもかかりますが、外部CTOや技術顧問であれば比較的短期間で契約できます。

外部CTOには主に以下の役割を担ってもらいます。

  • 開発会社の選定と見積もりの妥当性チェック
  • 技術スタックの選定アドバイス
  • 要件定義書・仕様書のレビュー
  • 開発会社との定例MTGへの参加
  • 納品物のコードレビュー

ただし、外部CTOにも限界があります。あくまでアドバイザーの立場であり、実際の開発実務には入らないケースがほとんどです。また、複数のクライアントを掛け持ちしているため、緊急時の対応が遅れることもあります。

戦略2:一気通貫で支援できる開発パートナーを選ぶ

CTO不在の企業にとって現実的な選択肢のひとつが、「ビジネス設計から開発まで一気通貫でサポートしてくれる開発パートナー」を選ぶことです。

通常の開発会社は「RFPに沿って開発する」スタンスのため、発注側が要件を明確に定義できていることが前提になります。しかし新規事業では「何を作るべきか」自体が不明確なケースが大半です。ここにミスマッチが生じます。

Wurでは以下のフェーズをワンストップで支援しています。

STEP1:ビジネス設計フェーズ(0.5〜2ヶ月)
クライアントへのヒアリング、想定ユーザーへのインタビュー、バーニングニーズの特定、主要画面の簡易デザイン作成を行います。

STEP2:UIデザイン・要件定義(0.5〜1.5ヶ月)
UIデザインの作成、要件定義書・ワイヤーフレームの作成、開発優先度の整理(MVP機能の選定)を行います。

STEP3:システム設計・実装(1.5ヶ月〜)
フロントエンド・バックエンド開発、テスト・デバッグを行い、リリース後も週次の進捗共有で伴走します。

このアプローチのメリットは、技術選定、要件定義、開発会社との調整といった、本来CTOが担うべき業務を開発パートナーに任せられる点です。

一気通貫支援を謳う会社は増えていますが、実態が伴っていないケースも少なくありません。以下のポイントで見極めましょう。

  • ビジネス設計の実績があるか:単なる開発会社ではなく、事業戦略から関われる体制があるか
  • 日本人PMが常駐しているか:オフショア開発でも日本人PMがシステム設計・コードレビューを担当しているか
  • 上流工程の提案力:「こんな機能が欲しい」というふわっとした相談に対し、具体的な提案ができるか
  • 過去の失敗事例の知見:「これまでどんな失敗パターンを見てきたか」を聞いてみる。失敗を知らない会社は慎重に見た方がよいでしょう

Wurに相談に来るクライアントの中には、「前の開発会社に依頼して失敗した。次は上流から一緒に考えてほしい」というケースが多くあります。実際に、人材業界向けのミッション選考型転職プラットフォームの開発を、ビジネス設計段階から一気通貫で支援した実績もあります。

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戦略3:MVP開発で小さく始める

CTO不在の状況では、いきなり大規模なシステムを作るのは避けたいところです。技術的な判断ができないまま大きな投資をすると、失敗時のダメージが大きくなります。

そこで有効なのがMVP開発です。まずは小さく作って市場の反応を見て、手応えを得てから本格的に投資する考え方です。

MVPでは「すべての機能」を作るのではなく、「バーニングニーズを解決する最小限の機能」に絞り込みます。例えば、当初は複数の管理機能を想定していたシステムでも、ユーザーインタビューの結果「ある特定の作業に毎月何十時間もかかっていて困っている」というバーニングニーズが特定されたなら、MVPではその機能だけに絞り込み、他の機能は後回しにします。

Wurでは、期間2ヶ月〜・費用337.5万円〜の水準でMVP開発を支援しています。前述のSTEP1〜STEP3を通じて、機能を絞り込みながら進めるイメージです。

MVP開発では、以下のステップで段階的に進めます。

  1. PSF:課題と解決策の一致を検証する段階です。「この課題は本当に深刻か」「このソリューションで解決できるか」をユーザーヒアリングで確認します。
  2. PMF:プロダクトと市場の一致を検証する段階です。実際にMVPをリリースし、「ユーザーが継続的に使ってくれるか」「お金を払ってくれるか」を検証します。

CTO不在の企業では、このプロセスを開発パートナーと一緒に進めることで、技術的な判断ミスを防ぎながら事業を前に進められます。

CTO代行サービスという選択肢

近年、「CTO代行」を専門に行う企業も増えてきました。外部CTOよりも深く関与し、社内のエンジニア採用、開発体制の構築、技術戦略の立案まで担当するサービスです。

CTO代行のメリットとしては、複数のスタートアップでCTO経験のある人材を活用できること、必要に応じて開発会社の紹介・選定も担当してくれることが挙げられます。一方で、複数社を掛け持ちしているため常駐ではないこと、実装作業は別途開発会社に外注する必要があること、契約期間終了後に技術ノウハウが社内に残りにくいことがデメリットです。

CTO代行は「将来的には内製化したいが、今はリソースがない」という企業に向いています。一方、「内製化の予定はなく、外部パートナーに長期的に任せたい」という企業には、一気通貫で開発を担う開発パートナーの方が適しているでしょう。

開発会社選定で見るべきポイント

CTO不在の企業が開発会社を選ぶ際、以下のポイントを重点的にチェックしましょう。

上流工程の対応力

「要件が固まっていないが相談できるか」と最初に聞いてみてください。「RFPを先に作ってください」と返す会社は、CTO不在の企業には向きません。「まずはヒアリングさせてください」と言ってくれる会社を選びましょう。

日本語でのコミュニケーション品質

オフショア開発を活用する会社が増えていますが、CTO不在の場合は「日本人PMが窓口になっているか」が重要です。エンジニアが海外にいても、日本人PMがシステム設計・コードレビューを担当していれば、コミュニケーションコストは下がります。

Wurでは、ベトナム・ハノイ工科大学出身者を中心とした開発チームを抱えていますが、必ず日本人エンジニアがシステム設計とコードレビューを担当する体制を取っています。これにより、国内開発の約1/2のコストで、品質を担保した開発を実現しています。

失敗事例の共有

「これまでどんな失敗を見てきたか」と聞いてみましょう。失敗パターンを豊富に知っている会社ほど、リスク回避の精度が高いはずです。

Wurの代表取締役CEO・閏間莉央は、法政大学在学中にホテル向け結婚式管理システムを開発する会社を共同設立し、その後複数のスタートアップでフルスタックエンジニア・PMとしてゼロから内製開発チームを立ち上げてきました。CCCグループのBlaboではテックリードとしてプロダクト開発・グロースハックを担当した経験もあります。「失敗のパターンを、身をもって体感してきた」からこそ、失敗確率を減らせる開発パートナーを目指しています。

保守・運用まで見据えた提案

「納品して終わり」の会社ではなく、リリース後のグロースハック、機能追加、保守運用まで伴走してくれるパートナーを選びましょう。特にラボ型(準委任)契約(毎月一定の稼働時間で契約し、ユーザーの反応や仕様の変化に合わせて柔軟に開発内容を調整できる契約形態)で対応できる体制があるかどうかは、重要なチェックポイントです。

補助金を活用してコストを削減する

CTO不在の企業にとって、開発コストは大きな懸念事項です。ここで検討したいのが各種補助金制度です。特に新規事業のシステム開発には、デジタル化・AI導入補助金やものづくり補助金などが活用できる可能性があります(2026年度より「IT導入補助金」は「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されています)。

補助金は魅力的ですが、申請書類の作成が煩雑になりがちです。CTO不在の企業では、技術的な説明部分の記載が難航するケースも多いでしょう。

実際にWurの支援先では、「外注見積もりが2,000万円以上だったシステムを、補助金活用後の実質負担300万円以下で実現できた」という声もいただいています。技術的な妥当性を判断できないまま高額な見積もりを受け入れてしまう前に、複数の選択肢を検討する価値はあるはずです。

まとめ

新規事業でCTO不在の状況は、決して珍しいことではありません。むしろ、多くの企業が同じ悩みを抱えています。

重要なのは、「CTO不在だから開発は無理」と諦めるのではなく、外部リソースを賢く活用しながら前に進めることです。外部CTOや技術顧問を活用する、ビジネス設計から開発まで一気通貫で支援してくれるパートナーを選ぶ、MVP開発で小さく始めて仮説検証を繰り返す、補助金を活用してコストを抑える。これらの選択肢を組み合わせることで、CTO不在でも新規事業のシステム開発を前に進めることは十分に可能です。

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閏間 莉央

AUTHOR

Wur株式会社 代表取締役 閏間 莉央

シリコンバレー留学をきっかけにIT業界へ。エンジニアとしてキャリアを積んだ後、
大手企業の新規事業開発・スタートアップCTOを経てWur株式会社を創業。
「人々の日常に、心躍る体験を。」をミッションに、新規ビジネスの立ち上げを一気通貫で
支援している。

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