「新規事業でアプリを作りたい」という相談は、Wurへの問い合わせの中でも特に多いテーマのひとつです。
スマートフォンの普及とAIの進化によって、アプリ開発のハードルは確実に下がっています。ただし、「作れるようになった」ことと「事業として成功する」ことは全く別の話です。
Wurではこれまで、大手企業からスタートアップまで50社以上の新規事業立ち上げを支援してきました。その中で見えてきた「アプリ開発で失敗するパターン」と「正しい進め方」を、この記事で余すことなくお伝えします。
アプリ開発で失敗する会社に共通する3つのパターン
パターン①:アプリを作ること自体が目的になっている
Wurに相談に来るクライアントの中で、最も多い失敗のパターンがこれです。「このアプリを作りたい」という状態でプロジェクトが始まり、開発完了後に「誰も使わない」という結果になる。
アプリはあくまで手段です。「誰のどんな課題を解決するか」が明確でないまま開発に進むと、機能だけが増え続けて予算を溶かします。
私たちが開発着手前に必ず行うのは、「このアプリがなければ、ユーザーは今どうしているか?」 という問いへの答えを確認することです。代替手段があって十分に困っていない状態なら、バーニングニーズがないということ。その場合は開発前に立ち止まる勇気が必要です。
パターン②:最初から機能を詰め込みすぎる
「あの機能も欲しい」「この機能も入れておこう」——初期リリースに多機能を盛り込もうとするクライアントは非常に多いです。
結果として開発期間が伸び、費用が膨らみ、リリースしてみたら使われない機能だけが残る。これが典型的な失敗です。
Wurでは、クライアントから機能の要望をヒアリングした後に必ず聞く質問があります。「この機能がないと、MVP(最小限のプロダクト)として検証できませんか?」——Yesと言えない機能は初期リリースに入れない。それが鉄則です。
パターン③:リリースがゴールになっている
アプリはリリースしてからが本当のスタートです。公開直後は当然ユーザーが少なく、データも少ない。そこからユーザーの行動を分析し、改善を重ねることで初めて「使われ続けるアプリ」になります。
リリース後の改善サイクルと、そのための予算を最初から計画に組み込んでいない会社は、公開後に失速するパターンが多いです。
新規事業アプリ開発の正しい進め方|5つのステップ
ステップ1:ターゲットと課題の解像度を極限まで上げる
「30代のビジネスパーソン向け」ではなく、「毎週月曜の朝に10件のエクセルを手作業で集計している、従業員30名の会社の経営管理担当者」というレベルまで解像度を上げます。
ターゲットが具体的になるほど、作るべき機能とメッセージが自然と定まります。Wurでは、この段階でUXインタビューを実施し、対象ユーザーの「本音の課題」を直接聞くことを必ず行います。
ステップ2:競合・市場調査で勝算を見極める
似たようなアプリがすでに存在するか、存在するとしたら自社の差別化ポイントは何かを明確にします。
ここで重要なのは、競合がいること自体は悪くないという点です。競合がいるということは市場があるということ。問題は「競合より明確に優れている点があるか」です。
ステップ3:ビジネスモデルを具体的な数字で設計する
月額課金なのか、買い切りなのか、広告収入なのか。収益モデルによって開発すべき機能も変わります。
同時に、開発費・サーバー代・保守費用・マーケティング費を含めたコスト全体を試算し、何ユーザー獲得すれば黒字化するかを数字で確認します。この試算を事業計画書に落とし込んでおくと、社内の稟議や資金調達の際にも役立ちます。
ステップ4:MVPで仮説を素早く検証する
本格開発の前に、コアバリューだけを持つ最小限のプロダクトを作り、実際のユーザーに触れてもらいます。
Wurでは最近、AIを活用することでこのMVP作成のスピードが大幅に向上しています。以前は数ヶ月かかっていたプロトタイプが数週間で用意できるようになりました。「まず動くものを見てみたい」という段階からでも対応可能です。
本開発へ進む判断基準は数字だけではありません。ユーザーから「こういう機能も欲しい」という声が自発的に上がる、「ずっと待っていた」という反応が得られる——そういった感覚的な手応えが出てきたとき、初めて本開発に進む意味が生まれます。
▶ MVPの費用相場や検証方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ステップ5:本開発とリリース後の改善サイクルを設計する
MVPで手応えを掴んだら本格開発へ。ただし、開発完了をゴールにせず、リリース後のPDCAサイクルを最初から計画に組み込むことが重要です。
Google AnalyticsやMixpanelなどのツールを使ってユーザーの行動データを取得し、どの機能が使われていて、どこで離脱しているかを定期的に分析します。データに基づいた改善を繰り返すことで、少しずつ「使われ続けるアプリ」に育てていきます。
ノーコード vs フルスクラッチ、新規事業に向いているのはどちらか
この問いへの答えは、「フェーズによって変わる」 です。
MVP・検証フェーズならノーコードが有効
BubbleやAdaloなどのノーコードツールを使えば、数十万〜300万円程度の費用で短期間にプロトタイプを作成できます。技術的な負債を最小限に抑えながら市場検証できる点が最大のメリットです。
ただし、ユーザー数が増えてきたときのスケーラビリティや、独自の複雑な処理が必要になった際に限界が来ることがあります。
本格展開・大規模開発にはフルスクラッチ
独自性の高い機能、大規模なユーザー基盤、高いセキュリティ要件が必要な場合はフルスクラッチ開発が適しています。費用は最低でも300万円〜、機能が複雑になれば1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
Wurでは、クライアントの事業フェーズと予算に合わせて最適な手法を提案しています。「とりあえずノーコードで検証して、手応えが出たらフルスクラッチで作り直す」という2段階のアプローチをとるケースも多いです。
アプリ開発会社を選ぶ際の5つの判断基準
①新規事業の立ち上げ支援実績があるか
受託開発の実績だけでなく、「事業として成功したかどうか」まで伴走した実績があるかを確認してください。アプリを「作った」会社と、事業を「成功させた」会社は別物です。
②バーニングニーズへの理解があるか
最初の打ち合わせで「何を作りたいですか?」しか聞かない会社は要注意です。「誰のどんな課題を解決しますか?」「その課題の緊急度は?」まで踏み込んで聞いてくれる会社を選ぶべきです。
③BtoB SaaSや新規事業領域の開発実績があるか
特にBtoB SaaSの開発経験がある会社は業界全体でもまだ少ないです。自社が作りたいものに近い領域の実績があるかを確認してください。
④見積もりの内訳が明確か
「一式〇〇万円」という見積もりは要注意です。どの工程にどのくらいの費用がかかるかが明確でないと、後から追加費用が発生するトラブルの原因になります。
⑤「言われたことだけ作る」スタンスでないか
「この機能は本当に必要ですか?」「こういうリスクがありますが大丈夫ですか?」と率直に議論してくれる会社かどうか。御用聞き型の開発会社に頼むと、使われない機能だけが増え続けます。
▶ 外注前に知っておくべきポイントはこちらの記事でも詳しく解説しています。
費用相場まとめ
| フェーズ | 手法 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 上流工程・要件定義 | — | 50万円〜 |
| プロトタイプ作成 | ノーコード・AIツール | 50万円〜 |
| MVP本開発 | ノーコード | 50〜300万円 |
| MVP本開発 | フルスクラッチ | 300万円〜 |
| 本格開発(大規模) | フルスクラッチ | 1,000万円〜 |
| 保守・運用(月額) | — | 初期費用の10〜20% |
▶ MVP開発の費用相場の詳細はこちらの記事をご覧ください。
よくある質問
A. はい、始められます。ノーコードツールの活用、またはWurのように技術面を一気通貫で担える会社に依頼することで、ビジネス側に専念する形でも十分に進められます。Wurへの相談者の多くは、技術的な知識がない状態からスタートしています。
A. むしろそのタイミングが最適です。Wurでは「ふわっとした相談」を歓迎しています。アイデアが固まっていない段階から上流工程に入ることで、方向性のズレを早期に発見できます。無料でのデモ作成やMVP事業診断レポートの提供も行っています。
A. 最も効果的なのは機能を絞ることです。加えて、IT導入補助金やものづくり補助金などの活用で初期費用を大幅に抑えられるケースがあります。Wurのうチームでは補助金の選定・申請サポートも行っています。
まとめ:アプリ開発の成否は「作る前」で8割決まる
新規事業でのアプリ開発を成功させるために最も重要なのは、開発に着手する前の段階です。バーニングニーズの確認、ユーザーインタビュー、MVP検証——これらを丁寧に行うことで、「誰も使わないアプリ」を作るリスクを大幅に下げられます。
Wurでは、アイデア段階からMVP・本格開発まで一気通貫で支援しています。「何から始めればいいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
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シリコンバレー留学をきっかけにIT業界へ。エンジニアとしてキャリアを積んだ後、大手企業の新規事業開発・スタートアップCTOを経てWur株式会社を創業。「人々の日常に、心躍る体験を。」をミッションに、新規ビジネスの立ち上げを一気通貫で支援している。エアトリグループ傘下として、国内外の豊富なネットワークを活かしたサービス開発を手掛ける。
