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2026.07.01ブログ

新規事業のKPI設定ガイド|フェーズ別に指標を解説

新規事業のKPI設定ガイド|フェーズ別に指標を解説

新規事業を立ち上げる際、多くの企業が「どのKPIを設定すればいいのかわからない」という壁にぶつかります。既存事業なら売上・利益率といった確立された指標がありますが、新規事業では「何を成功の基準とするか」自体が曖昧なケースがほとんどです。

Wurは2019年2月の創業以来、大手企業から個人起業家まで、業種を問わず50社以上の新規事業支援に携わってきました。その現場で見えてきたのは、「KPIを間違えると、開発したプロダクトが誰にも使われない」という厳しい現実です。

この記事では、Wurが実際の支援プロジェクトで活用しているKPI設定の考え方と、フェーズ別に追うべき具体的な指標を解説します。

目次

新規事業のKPI設定が難しい3つの理由

1. 既存事業のKPIをそのまま流用してしまう

Wurに相談に来るクライアントの多くが、既存事業で使っているKPI(売上・粗利・成約率など)をそのまま新規事業にも適用しようとします。しかし、これは大きな間違いです。

新規事業の初期フェーズでは「売れるかどうか」よりも「顧客の課題を正しく捉えているか」が重要になります。いきなり売上目標を追うと、課題検証が不十分なまま開発を進め、結果的に誰も使わないプロダクトが完成してしまいます。

2. 「とりあえず」で設定した指標を追い続ける

「まずはユーザー登録数100件を目指そう」といった形で、根拠のない数値目標を設定するケースも多く見られます。この「とりあえず」のKPIが問題なのは、達成しても失敗しても次のアクションが見えないことです。

KPIは「達成したら何がわかるのか」「未達成なら何を改善すべきか」が明確でなければ、ただの数字遊びになってしまいます。

3. フェーズに応じた指標の切り替えができない

新規事業は「課題検証→解決策検証→事業化」とフェーズが進むにつれて、追うべき指標が変わります。PSF(Problem Solution Fit=課題と解決策が噛み合っている状態)の段階で売上を追っても意味がないように、PMF(Product-Market Fit=プロダクトが市場に受け入れられている状態)達成後も初期指標を追い続けるのは非効率です。

Wurの現場では、クライアントとフェーズごとのKPIツリーを最初に設計し、「いつ、何の指標に切り替えるか」を明確にしてからプロジェクトをスタートします。

新規事業のKPI設定で押さえるべき基本原則

バーニングニーズの特定が最優先

新規事業のKPI設定で最も重要なのは、「バーニングニーズ(頭に火がついたような切迫した課題)」を正しく捉えることです。ユーザーが本当に困っている課題を解決できなければ、どんなに美しいKPIツリーを作っても意味がありません。

Wurでは、ビジネス設計フェーズで徹底的にユーザーインタビューを行い、バーニングニーズを特定します。この段階でのKPIは「インタビュー実施数」「課題の深刻度スコア」など、定性的な情報を定量化する指標が中心になります。

フェーズごとに「問い」を明確にする

新規事業は大きく3つのフェーズに分かれ、それぞれで答えるべき「問い」が異なります。

PSFフェーズでは「課題は正しいか?」を問います。ユーザーは本当にその課題で困っているか、その課題を解決する価値があるか、競合では解決できていないか、といった点を検証する段階です。

PMFフェーズでは「解決策は正しいか?」を問います。ユーザーは実際にプロダクトを使うか、継続的に使ってくれるか、お金を払ってくれるか、といった反応を確かめる段階です。

スケーリングフェーズでは「ビジネスとして成立するか?」を問います。収益構造は健全か、LTV(顧客生涯価値)がCAC(顧客獲得コスト)を上回っているか、成長は持続可能か、を見極める段階です。

KPIは、各フェーズの「問い」に答えるために設定するものです。この原則を忘れると、指標そのものが目的化してしまいます。

先行指標と遅行指標を組み合わせる

遅行指標(Lagging Indicators)は結果を示す指標です。売上・契約数・利益率など、ビジネスの成果を測るものです。一方、先行指標(Leading Indicators)は結果につながる行動を測る指標です。問い合わせ数・トライアル申込数・アクティブユーザー数などが該当します。

新規事業では、先行指標を重点的に追うことが重要です。遅行指標だけを見ていると、「売上が伸びない」という結果はわかっても「何を改善すべきか」が見えません。先行指標の動きを見ながら改善サイクルを回すことで、遅行指標の改善につなげます。

Wurの開発フローとKPI検証フェーズの対応

KPIツリーは頭の中で設計するだけでなく、実際の開発スケジュールと紐づけて初めて機能します。Wurの開発フローは3つのステップで構成されており、それぞれが検証すべきKPIフェーズと対応しています。

STEP1のビジネス設計フェーズ(0.5〜2ヶ月)では、クライアントヒアリングとユーザーインタビューを通じてバーニングニーズを特定します。ここで追うのは、先ほど紹介したPSFフェーズの指標です。

STEP2のUIデザイン・要件定義フェーズ(0.5〜1.5ヶ月)では、ワイヤーフレームや主要画面のデザインを作りながら、実際にユーザーに触ってもらいタスク達成の見込みを確認します。ここがPSFからPMF検証への橋渡しの期間になります。

STEP3のシステム設計・実装フェーズ(1.5ヶ月〜)で、実際にMVP(Minimum Viable Product=顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)を開発し、リリース後にPMFフェーズのKPI(アクティブユーザー率、リテンション、NPSなど)を本格的に計測し始めます。

Wurが提供するMVP開発は、期間2ヶ月〜が一つの目安です。さらに最新サービスの「Wur ゼロイチAI」では、AI PMが曖昧なアイデアを15分でプロ仕様の事業計画書に変換し、Claude Codeの活用によって従来の1/3の期間・コストでのMVP納品を目指しています。KPI検証は「早く回すほど学びが増える」性質があるため、この開発スピードの違いが、PSF→PMFの仮説検証サイクルの回数に直結します。

PSFフェーズで追うべきKPI

PSFフェーズは「課題が正しいか」を検証するステージです。この段階ではプロダクトすら存在しないため、KPIは定性調査の定量化が中心になります。

インタビュー実施数・深度

目安は、ターゲットセグメントごとに10〜20名です。Wurでは、ビジネス設計フェーズで必ずユーザーインタビューを実施します。このとき重要なのは「数」だけでなく「深度」です。課題の深刻度を5段階評価し、「4以上(かなり困っている)」と回答した割合を追います。

例えば「この課題が解決されたら月額いくら払いますか?」という問いに対し、具体的な金額を即答できる人が何%いるかを見ます。

課題の再現性

目安は、同じ課題を持つ人が全体の60%以上です。インタビューで出てきた課題が、特定の個人だけの問題なのか、市場全体に共通する課題なのかを見極めます。再現性が低い課題を解決しても、ビジネスにはなりません。

Wurが支援した介護マッチング領域のサービスでは、介護施設探しで困っている家族にインタビューを重ね、「情報が多すぎて選べない」という課題が特定の家庭だけでなく共通していることを確認した上で、機能開発の優先順位を決めていきました。

競合ソリューションの不満度

目安は、既存ソリューションへの不満が70%以上です。「その課題、今はどうやって解決していますか?」という問いに対し、既存の解決策(競合サービス・手作業・諦めるなど)への不満度を測ります。不満度が低ければ、わざわざ新しいプロダクトに乗り換える理由がありません。

PSFフェーズのKPI例

  • ユーザーインタビュー実施数:20件
  • 課題の深刻度4以上の割合:65%
  • 課題の再現性:70%
  • 既存ソリューションへの不満度:75%
  • 想定価格への支払い意向:50%

これらの指標が一定水準を超えたら、PSF達成と判断し、次のPMFフェーズ(プロトタイプ開発)に進みます。

PMFフェーズで追うべきKPI

PMFフェーズは「解決策が正しいか」を検証するステージです。MVPを開発し、実際にユーザーに使ってもらいながら指標を追います。

アクティブユーザー率(DAU/MAU)

目安は、初期は20%以上、PMF達成時は40%以上です。DAU(Daily Active Users)をMAU(Monthly Active Users)で割って算出し、ユーザーがどれくらいの頻度でプロダクトを使っているかを測ります。

Wurが支援した動物病院向け予約受付DXサービスでは、利用継続率99%という高い水準を維持しています。この水準は、開発初期からアクティブユーザー率とリテンションを丁寧に追い続けた結果でもあります。

リテンション率(継続率)

目安は、1週間後40%以上、4週間後20%以上です。初回利用から1週間後・4週間後にどれだけのユーザーが残っているかを測ります。リテンション率が低い場合、プロダクトが課題を本質的に解決できていない可能性が高いといえます。

Wurの現場では、リテンションカーブを週次で確認し、「どの機能を使ったユーザーが継続しているか」を分析します。

NPS(Net Promoter Score)

目安は、初期は0以上、PMF達成時は30以上です。「このサービスを友人に勧めますか?」を0〜10点で評価してもらい、推奨者(9〜10点)の割合から批判者(0〜6点)の割合を引いた値で、ユーザー満足度を測る代表的な指標です。

NPSがマイナスの場合、プロダクト改善が最優先になります。いくらマーケティングに投資しても、ユーザーが満足していなければ解約されてしまいます。

タスク達成率

目安は、コア機能で80%以上です。「ユーザーがやりたいこと(タスク)を、プロダクト上で完遂できるか」を測る指標です。例えば予約システムなら「予約完了までたどり着けた人の割合」がこれにあたります。

Wurでは、UIデザイン・要件定義フェーズでユーザビリティテストを実施し、タスク達成率を事前に測定します。

PMFフェーズのKPI例

  • アクティブユーザー率(DAU/MAU):25%
  • 1週間後リテンション率:45%
  • 4週間後リテンション率:22%
  • NPS:15
  • コア機能のタスク達成率:82%
  • 月間成長率(MoM):15%

これらの指標が目標値を超えたら、PMF達成と判断し、スケーリングフェーズに移行します。

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スケーリングフェーズで追うべきKPI

スケーリングフェーズは「ビジネスとして成立するか」を検証するステージです。ここでようやく売上・利益といった財務指標が重要になります。

MRR(Monthly Recurring Revenue)/ ARR(Annual Recurring Revenue)

目安は、MRR成長率で月10%以上です。サブスクリプション型ビジネスの場合、毎月・毎年の継続課金収益を追います。新規獲得だけでなく、既存顧客の継続・アップセルも含めた総合的な成長指標です。

LTVとCACの比率

目安は、LTV/CAC>3です。顧客生涯価値(LTV)が顧客獲得コスト(CAC)の3倍以上であれば、健全なビジネスモデルと判断できます。これを下回る場合、マーケティング費用が回収できていない可能性が高いといえます。

Wurに相談に来るクライアントの中には、「月100万円の広告費をかけているのに売上が伸びない」というケースがあります。多くの場合、LTVがCACを下回っており、投資すればするほど赤字が膨らむ構造になっています。

チャーンレート(解約率)

目安は、月間チャーンレート5%以下です。月間でどれだけの顧客が解約したかを測る指標で、SaaSビジネスではチャーンレートが7%を超えると成長が鈍化します。

Wurが支援したマイナンバー管理領域のSaaSでは、導入後のオンボーディング設計を丁寧に組み込むことで、低い解約率の維持を目指した設計を行いました。

ユニットエコノミクス

目安は、1顧客あたりの利益がプラスであることです。1顧客を獲得・維持するのにかかるコスト(CAC+サポートコスト+サーバー費用など)と、1顧客から得られる収益(LTV)を比較します。ユニットエコノミクスがマイナスの場合、規模を拡大すればするほど赤字が膨らみます。

スケーリングフェーズのKPI例

  • MRR:500万円(前月比+12%)
  • LTV/CAC:3.5
  • 月間チャーンレート:4.2%
  • ユニットエコノミクス:+25,000円/顧客
  • ARR成長率:年120%
  • Gross Margin(粗利率):70%

これらの指標が安定すれば、資金調達や本格的な組織拡大に進めます。

フェーズ別KPI早見表

ここまでの内容を、フェーズごとの「問い」と代表的な指標でまとめると、以下のようになります。

フェーズ答えるべき問い代表的なKPI目安値の一例
PSF課題は正しいかインタビュー実施数、課題深刻度、既存ソリューション不満度深刻度4以上65%、不満度75%
PMF解決策は正しいかDAU/MAU、リテンション率、NPS、タスク達成率DAU/MAU 20〜40%、NPS 0〜30
スケーリングビジネスとして成立するかMRR成長率、LTV/CAC、チャーンレートLTV/CAC>3、チャーン5%以下

自社のプロジェクトが今どのフェーズにいるのか分からない、という場合は、まずこの表と照らし合わせてみてください。

新規事業のKPI設定でよくある失敗パターン

失敗パターン1:指標が多すぎて追いきれない

Wurの現場でよく見るのが、「あれもこれも測りたい」と20個以上のKPIを設定し、結局どれも中途半端になるケースです。KPIは「今、最も重要な問いに答えるための指標」に絞るべきです。

目安として、各フェーズで追うべきKPIは5〜7個までです。それ以上増やすと、チーム全体で共有しづらくなります。

失敗パターン2:計測できない指標を設定する

「顧客満足度を向上させる」「ブランド認知を拡大する」といった抽象的な目標をKPIとして設定するケースがあります。しかし、具体的な計測方法が決まっていなければ、それはKPIとは呼べません。

KPIは必ず「誰が・いつ・どうやって測るか」まで定義する必要があります。Wurでは、KPI設計と同時に計測ダッシュボードを構築し、リアルタイムで数値を確認できる環境を整えます。

失敗パターン3:目標値に根拠がない

「とりあえずユーザー1,000人」「月商100万円」といった、根拠のない目標値を設定するケースも多く見られます。目標値は、ベンチマーク(類似サービスの実績)や事業計画から逆算して設定すべきです。

Wurでは、ビジネス設計フェーズで競合分析を行い、「同じ市場・同じターゲットのサービスが、同じ時期にどれくらいの数値を達成しているか」を調査します。

失敗パターン4:KPIを変更しない

フェーズが変わってもKPIを変えず、初期に設定した指標を追い続けるケースがあります。例えば、PMF達成後も「ユーザー登録数」だけを追い続け、収益化の指標を見ていない場合、ビジネスとして成立しません。

KPIは固定的なものではなく、事業の成長に応じて柔軟に変えていくべきものです。四半期ごとにKPIレビューの場を設け、「次の3ヶ月で追うべき指標」を再設定することをおすすめします。

KPIを運用する5つのコツ

1. 週次で振り返る習慣をつける

KPIは設定しただけでは意味がありません。週次でチーム全体が数値を確認し、「なぜこの数値になったのか」「来週は何をすべきか」を議論する場を作ることが重要です。

2. 数値の背景にある「なぜ」を深掘りする

「リテンション率が30%→25%に下がった」という事実だけでは、改善アクションは見えません。「なぜ下がったのか」を深掘りし、「新機能のUIが分かりづらかった」「競合が新サービスをリリースした」といった要因を特定します。Wurの現場では、KPIが悪化したときは必ずユーザーヒアリングを実施し、定量データと定性データを組み合わせて分析します。

3. 誰が見てもわかるダッシュボードを作る

KPIは経営陣だけでなく、開発チーム・マーケティングチーム全員が見られる場所に置くべきです。BIツールを活用し、リアルタイムで数値が更新されるダッシュボードを構築することで、認識のズレを防げます。

4. 小さく改善を繰り返す

KPIが目標未達でも、焦って大きな方向転換をする必要はありません。まずは「どの指標が最もボトルネックか」を特定し、そこに集中して小さな改善を繰り返します。Wurではラボ型(準委任)契約を活用し、週次で機能追加やUI改善を行いながら、KPIへの影響をそのつど測定しています。

5. 成功の定義を明確にする

「どの指標が、どの水準に達したら次のフェーズに進むか」を事前に決めておくことが重要です。これがないと、「なんとなくまだ早い気がする」という感覚論で判断が遅れてしまいます。プロジェクト開始時点で「PSF達成の条件」「PMF達成の条件」を明文化しておくと、フェーズ移行の判断がぶれません。

まとめ

新規事業のKPI設定は、フェーズごとに「答えるべき問い」を明確にし、その問いに答えるための指標を選ぶことが本質です。既存事業の指標をそのまま流用したり、根拠のない目標値を設定したりすると、開発したプロダクトが誰にも使われない結果になりかねません。

Wurでは、ビジネス設計フェーズでバーニングニーズを特定し、PSF・PMF・スケーリング各フェーズで追うべきKPIをクライアントと一緒に設計しています。指標は固定的なものではなく、事業の成長に応じて柔軟に変えていくものです。週次で振り返り、小さく改善を繰り返すことで、着実にゴールへ近づけます。

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